海外旅行や出張で飛行機に乗るとき、航空券の予約画面で「あれ?」と思った経験はありませんか?
例えば、JAL(日本航空)の便として予約したのに、実際に空港のカウンターでチェックインするのはアメリカン航空だったり、ANA(全日空)の便名がついているのに、搭乗するのはルフトハンザドイツ航空の機体だったり・・・。
このような現象は決して飛行機の予約の手違いや間違いではなく、これこそが現代の航空業界においてなくてはならない仕組み、「コードシェア便(Code-share Flights)」なのです。
特に海外旅行に慣れていない方や頻繁に飛行機を利用する方でも、コードシェア便の仕組みを完全に理解している方は意外と少ないかもしれません。
しかし、この仕組みを深く知っておくことは、より快適でトラブルのない空の旅を送る上で非常に重要です。
今回は、私自身が長年の海外渡航経験から学んだ知識と、JALやANAなどの公式情報、さらには消費者庁の注意喚起なども徹底的に盛り込み、この「コードシェア便」というシステムを、メリットはもちろん遅延・欠航時のトラブルや補償金請求に関するEU261法といった「知っておかないと損をする」情報まで徹底的に解説していきます!
この情報さえあれば、飛行機のコードシェア便を完全に理解でき、空の旅が更に快適でスマートなものになるでしょう。
- 飛行機のコードシェア便とは?その仕組みを徹底解剖!
- 飛行機のコードシェア便を利用する5大メリット
- 知っておくべき落とし穴!コードシェア便のデメリットとトラブル
- 特に注意!飛行機の遅延・欠航時の「EU261法」とは?
- コードシェア便でのトラブルを避ける最強の対策
- まとめ
- Q&A(コードシェア便に関する10の疑問と回答)
- Q1:コードシェア便とアライアンス(JALのワンワールド、ANAのスターアライアンスなど)は何が違うのですか?
- Q2:コードシェア便でも、機内食や座席指定は販売会社からできますか?
- Q3:運航会社がLCC(格安航空会社)だった場合、コードシェア便は適用されますか?
- Q4:コードシェア便のチェックインは、どの会社のカウンターに行けばいいですか?
- Q5:コードシェア便で欠航になった場合、補償の請求先は販売会社と運航会社、どちらですか?
- Q6:EU261法が適用されるフライトで3時間以上の遅延が発生した場合、補償の申請はどのように行いますか?
- Q7:コードシェア便を利用した場合、マイルの積算率はどうなることが多いですか?
- Q8:コードシェア便で乗り継ぎをする場合、預けた荷物は最終目的地まで自動で運ばれますか?
- Q9:販売会社と運航会社で、手荷物規定が異なるときは、どちらの規定が適用されますか?
- Q10:コードシェア便のチケットが、運航会社の直接販売価格よりも安くなるのはなぜですか?
飛行機のコードシェア便とは?その仕組みを徹底解剖!

まずは、この飛行機のコードシェア便とは一体どういう仕組みで成り立っているのか、基本からしっかりと理解していきましょう。
これを知ることで予約時にコードシェア便のほうが良いのか、選ぶ際の大きな知識となります。
飛行機のコードシェア便の定義と役割
コードシェア便とは2つ以上の航空会社が一つの同じフライトに対して、それぞれ自社の便名(コード)をつけて販売する運航形態のことです。
この仕組みを理解する上で、以下の役割の違いを明確にすることが最も重要です。
1. 販売会社(マーケティング・キャリア)
- 便名(コード)を付与し、航空券を販売する会社。
- 私たちが予約サイトや旅行会社から購入する際に目にする「〇〇航空の便」です。
2. 運航会社(オペレーティング・キャリア)
- 実際に機材(飛行機)を提供してフライトを運航する会社。
- あなたが実際に搭乗し、機内サービスや乗務員、座席の仕様などを享受する航空会社です。
つまり、JALの便名でチケットを購入したとしても、実際にその便を飛ばしているのがアメリカン航空であれば、JALが「販売会社」、アメリカン航空が「運航会社」ということになります。
この「運航会社」こそがフライトの品質、機材の快適性、遅延・欠航時の対応窓口など、旅のあらゆる側面に大きな影響を与えるカギとなるのです。
なぜコードシェア便は存在するのか?(航空会社側のメリット)
航空会社がコードシェア便を積極的に導入する背景には、主に以下の3つの戦略的なメリットがあります。
これは、私たち乗客の利便性にも直結している一方で、複雑さを生む要因の一つとなっています。
1. ネットワークの飛躍的拡大
航空会社が自社の便だけで世界中のすべての都市を結ぶのは、物理的にもコスト的にも不可能です。
コードシェアを利用することで、提携先の航空会社が運航している路線に自社の便名を付与し、あたかも自社がその路線を運航しているかのように見せることができます。
これにより、自社のネットワークが世界中に広がったように見え、特に地方都市やマイナーな路線へのアクセスを確保できます。
例えば、日本の航空会社が運航していないヨーロッパの都市でも、現地の提携航空会社の便を利用することで、「羽田から最終目的地までワンストップで予約できる」という利便性を乗客に提供できるのです。
2. 競争力の強化と収益性の向上
一つのフライトの座席を複数の航空会社が販売することで、航空会社側は座席の販売機会を増やして座席稼働率を向上させることができます。
同じ便に対して複数の航空会社が営業活動を行うことになり、結果として競争力が強化されることになります。
特に需要が低い時期や路線であっても、コードシェアという提携の力で安定した収益を確保しやすくなっているのです。
3. コストの最適化と効率化
新しい路線を開設する場合、機材の購入、パイロットや客室乗務員の確保、空港での地上業務の整備など、莫大な初期投資と運行コストが発生します。
コードシェア便では、他社の運航機材や人員を間接的に利用できるため、自社で路線を開設するよりも遥かに低いコストでサービス提供できます。
これは特に長距離路線や採算の取りにくい路線において、非常に効率的な戦略となります。
航空アライアンスとの深い関係
コードシェア便を語る上で欠かせないのが、「航空アライアンス(Airline Alliance)」の存在です。
アライアンスとは世界中の航空会社が提携し、一つの大きなグループとしてサービスを提供するための連合体です。
現在、世界には主に以下の3大アライアンスが存在し、このアライアンス内で多くのコードシェア便が展開されています。
JALのマイレージを貯めている方なら「ワンワールド(Oneworld)」を良くご存知かと思いますが、これもアライアンスの一つとなっています。
| アライアンス名 | 日本の主な加盟航空会社 | 主な特徴 |
| スターアライアンス | ANA(全日空) | 世界最大級のアライアンス。広範なネットワークと統一されたサービスが強み。 |
| ワンワールド(Oneworld) | JAL(日本航空) | 上級会員特典の相互利用に優れ、特に大西洋・太平洋路線に強い。 |
| スカイチーム(SkyTeam) | なし(かつてはアリタリア航空などが加盟) | 世界で2番目に大きなネットワーク。主に欧州・北米・アジア路線をカバー。 |
コードシェアは、このアライアンスという「大家族」の中で、特に緊密な協力関係を築くための手段と言えます。
アライアンス内の航空会社同士であれば予約システム、マイレージプログラム、ラウンジサービスなどを相互に利用しやすくなっているため、私たち乗客もシームレスなサービスを享受できるのです。
貯めたマイルを複数の提携航空会社の航空券予約に利用できるのは、こういった仕組みが関係しているからですね。
飛行機のコードシェア便を利用する5大メリット

「結局、利用者である私たちにとってコードシェア便って良いことあるの?」という疑問をお持ちかもしれません。
結論から言うと、メリットは非常に大きく、知っておくと旅行の快適性が格段に向上します。以下に5つほど挙げていきます。
1. 予約・乗り継ぎの利便性が大幅に向上
コードシェア便の最大の利点は、「ワンストップ予約」が可能になることです。
例えば、コードシェア便がなければ東京からフランスの地方都市であるボルドーまで旅行する場合、通常は「東京-パリ間」はJAL、「パリ-ボルドー間」はエールフランス航空と別々の航空会社のフライトを個別に予約しなければなりません。
しかし、JALとエールフランス航空がコードシェア提携をしていれば、JALのウェブサイトで「東京からボルドーまで」の航空券を一枚のチケットとして予約・購入することができます。

これにより、乗り継ぎ時に発生しがちなトラブル(乗り継ぎ時間の計算ミス、別々の予約による手荷物の再預け入れなど)が大幅に軽減され、最初から最後まで一つの航空会社の責任のもとで旅を完結できるという安心感が得られます。
出発した空港で預けた荷物も、通常は最終目的地まで運んでくれます。
2. スケジュールと選択肢の多様性
コードシェア便がなければ、特定の路線において選択できるフライトは限られてしまいます。
しかし、提携することによって同じ時間帯のフライトでも、複数の航空会社の便名が付与されることで、以下のようなメリットが生まれているのです。
| 多角的な選択肢 | 詳細 |
| 時間の選択肢 | 早朝、午前中、午後、深夜など、同じ路線でも提携先のフライトを含めて選択肢が広がり、最も都合の良い時間帯を選べる。 |
| 運賃の選択肢 | 同じフライトでも、販売会社によって運賃クラスや価格設定が異なる場合があるため、より安価なチケットを見つけやすくなる。 |
| 機材の選択肢 | JAL便として予約しても、提携先の最新鋭機材(例:ボーイング787など)に乗れる可能性があり、結果的に快適なフライトになることもあります。 |
3. マイル・ステータスの統合と相互利用も可能
アライアンス内のコードシェア便を利用することで、マイルの積算や上級会員特典の恩恵を最大限に享受できることもメリットの一つです。
例えば、ANAの上級会員(スターアライアンス・ゴールドメンバー)だとした場合、ANA便名で、提携しているルフトハンザドイツ航空が運航するフライトに搭乗した場合でも、ANAの上級会員資格が適用され、ルフトハンザ航空のラウンジを利用したり、優先チェックイン・搭乗サービスを受けたりすることが可能になります。
また、本来であればルフトハンザ航空のマイレージプログラムに積算されるべきマイルを、ANAのマイレージプログラム(ANAマイレージクラブ)に積算できるため、マイルを一つのプログラムに集中させ、効率的に貯めることができます。
4. 運賃の柔軟性と安価なチケットの発見
前述の通り、同じフライトでも販売会社によって運賃が異なる場合があります。
特に、提携先の航空会社がその国や地域で運賃を低く設定している場合、コードシェア便のチケットが運航会社の直接販売価格よりも安くなるケースがあります。
これは、航空会社が自社の便名が付いたチケットの販売促進を目的として、戦略的に運賃を設定しているためです。
賢い旅行者は複数の航空会社のウェブサイトや比較サイトで、同じフライトの運賃をチェックし、最もお得なチケットを探すことができます。
因みに個人的には、航空会社のホームページから直接購入したほうが安いことが多いなと感じています。
5. 運航品質への信頼性の担保
特定のマイナーな航空会社や、まだ利用したことのない新しい路線に不安を感じる方もいるかもしれません。
しかし、コードシェア提携を結ぶためには提携先の航空会社が定める安全基準やサービス水準をクリアする必要があります。
JALやANAのような日本の大手航空会社が便名を付与しているということは、その運航会社が、少なくとも日本の航空会社が認める一定の品質と安全性を満たしているという、一種の「お墨付き」を得ていることになります。
これは、私たち乗客にとって大きな安心材料となるため、あまりなじみのない航空会社を選ぶ際は、アライアンスに入っているかを基準にしてみるのも良いかもしれません。
知っておくべき落とし穴!コードシェア便のデメリットとトラブル

メリットが多いコードシェア便ですが、その複雑な仕組みゆえに、事前に知っておかないと重大なトラブルに発展する可能性を秘めています。
ここからは特に注意すべきデメリットと、実際に起こり得るトラブル事例を詳しく紹介していきます。
1. 期待とのギャップ!機内サービスの統一性の欠如
JAL便としてチケットを購入したため、当然「日本の航空会社の機内サービス」を期待していたとしましょう。
しかし、実際に搭乗してみると運航会社が海外の航空会社だった場合、以下のような「期待とのギャップ」に直面することがあります。
| 項目 | 期待とのギャップの具体例 |
| 言語 | 客室乗務員は基本的に運航会社の公用語(若しくは英語)でサービスを行います。日本語での対応が期待できない、又は限定的になる場合もあります。 |
| 機内食 | 機内食のメニューや質、提供されるドリンク類は運航会社の標準サービスに準じます。和食のクオリティや品揃えが期待通りではない可能性があります。 |
| エンターテイメント | 搭載されている映画や音楽のコンテンツは運航会社のものが中心です。日本語字幕・吹き替えのコンテンツが極端に少ないことがあります。 |
| 座席・機材 | 座席のピッチ(前後間隔)、シートの硬さ、充電ポートの有無など、機材の仕様は運航会社に依存します。 |
これらのギャップは旅の満足度に直結しるため、特に小さな子どもを連れている場合や長距離フライトの場合は、事前に運航会社の機内サービスを公式サイトなどで確認することが大切です。
2. 予約の混乱とチェックインカウンター間違い
これもコードシェア便で発生するトラブルの一つで、覚えておくことでストレスを感じることなく快適な旅ができます。
JALのチケットを持っているのに、空港の表示板にはJALの便名とアメリカン航空の便名が並んで表示されています。
このとき空の旅に慣れていない人は、「どちらのカウンターに行けば良いんだろう?」と迷ってしまうのです。
原則として、チェックインや荷物の預け入れは「運航会社(Operating Carrier)」のカウンターで行う必要があります。
もし販売会社のカウンターに行ってしまった場合、そこでのチェックインを拒否され、運航会社のカウンターまで移動するように案内されることになります。
広い国際空港では、この移動だけで多大な時間を浪費し、最悪の場合搭乗時間に間に合わなくなる可能性さえあります。
対策:Eチケットや予約確認メールに記載されている「運航会社」を必ず確認し、空港では運航会社のロゴとカウンターを目指しましょう。
3. マイル積算率・手荷物規定の複雑化
コードシェア便はマイルを貯める上での「落とし穴」にもなり得ます。
また、手荷物の規定が各航空会社によって異なり、事前に確認しておかないと預けることができなくなったり、荷物の重さやサイズを変更しなければならなかったりと、大きな負担になることがあります。
マイル積算率の問題
マイルの積算率は航空券の「予約クラス(ブッキングクラス)」によって細かく定められています。コードシェア便の場合、以下の点が複雑になります。
| 積算の複雑性 | 詳細 |
| 積算率の低下 | チケットを購入した販売会社(例:JAL)が設定した格安の予約クラス(例:Vクラス)が、実際にマイルを積算したいプログラム(例:ANA)で「マイル積算対象外」や「極端に低い積算率(例:30%)」に設定されていることがあります。 |
| マイルの相互理解 | 航空会社間で予約クラスの名称は共通していますが、同じアルファベットでも積算率が異なることがあるため、積算前に必ず提携先の航空会社の積算ルールを確認しておくと良いです。 |
手荷物規定の厳格化
手荷物規定(特に無料手荷物許容量)は通常、以下のルールに従います。
- 原則として、旅程の中で最も長い区間を運航する航空会社の規定が適用されます(IATAのMSC:Most Significant Carrierルール)。
- しかし、コードシェア便を含む旅程では、最初に国際線区間を運航する航空会社の規定が適用されることが多いなど、判断基準が複雑化しています。
いずれにしても販売会社の規定ではなく、運航会社の規定が適用されると覚悟しておき、事前に運航会社のウェブサイトで自分の予約クラスに応じた手荷物許容量を必ず確認しましょう。
規定を超えると高額な追加料金を支払うことになるため、私は少しでも曖昧だなと感じたら、問い合わせ窓口に電話で詳しく聞いています。
4. 遅延・欠航時の責任の所在が不明確
コードシェア便における最も重大なトラブルは、フライトが遅延・欠航した際の「責任の所在」が曖昧になることです。
これは私も過去に3度ほど経験して結構面倒なことになったので、強調しておきたいポイントでもあります。
チケットはJALから購入した(販売会社)けど、実際にフライトを運航したのはブリティッシュ・エアウェイズ(運航会社)だった場合、補償や振り替えの手続きをどちらに依頼すべきかで混乱が生じます。
原則としてフライトの運航に関する責任(遅延・欠航の際の振り替え、宿泊手配、補償)は「運航会社(Operating Carrier)」が負います。
しかし、チケットを購入した販売会社もサポート窓口となることが多いため、乗客としては「たらい回し」に遭うような感覚に陥りやすく、手続きに多大な時間を要する可能性があります。
遅延・欠航時の鉄則:まずは運航会社のカウンターまたはコールセンターに連絡し、同時に販売会社(チケットを購入した航空会社や旅行会社)にも連絡して、振り替え便の手配を迅速に行いましょう。
特に注意!飛行機の遅延・欠航時の「EU261法」とは?
コードシェア便を利用してヨーロッパへ渡航する場合、またはヨーロッパ内を移動する場合、遅延や欠航といったトラブルが発生した際に、乗客を強力に保護してくれるのが「EU規則261/2004(EU261法)」です。
この法律は、コードシェア便の複雑な責任問題を解決する上で非常に重要なカギとなっています。
遅延・欠航時にEU261法が適用される条件
EU261法は、以下のいずれかの条件を満たすフライトに適用されます。
- EU加盟国(EEA諸国も含む)の空港から出発するフライト(運航会社を問わない)。
- EU加盟国(EEA諸国も含む)の空港に到着するフライトで、かつEU加盟国の航空会社が運航しているフライト。
つまり、東京(EU外)発でパリ(EU内)行きのフライトで、ANA(EU外の航空会社)が運航している場合は適用外となりますが、パリ(EU内)発で東京行きのフライトであれば、運航会社を問わず適用されることになります。
これらを把握していないと受け取れるはずだった補償金が受けられなくなるので注意が必要です。
また、遅延・欠航などがあった場合、航空会社から代替便やそれに乗るためのサポート(公共交通機関の利用やホテルのブッキングなど)は案内されることがありますが、このEU261法に基づく補償金に関しては、基本的に航空会社から案内されないため、自らオンラインで申請して手続きを行う必要があります。
EU261法の詳細や申請・手続きの方法などは以下の記事でも紹介していますので、是非ご覧ください。


EU261法とコードシェア便の関係の核心
EU261法がコードシェア便に適用される場合、補償の義務を負うのは、「実際にフライトを運航した会社(Operating Carrier)」です。
ここで重要なのはチケットをJAL(販売会社)から購入したか、ルフトハンザ航空(運航会社)から購入したかは関係なく、実際に飛行機を飛ばしたルフトハンザ航空(EU内の航空会社)が補償責任を負うという点です。
もし、EU261法の適用条件を満たすフライトで、大規模な遅延(到着が3時間以上遅れた場合)や欠航が発生した場合、航空会社は以下の補償を乗客に提供する義務があります。
補償内容の例(遅延・欠航時)
これは、航空会社側の「善意のサービス」ではなく、法的に定められた義務です。補償額はフライトの飛行距離によって、以下の通り定められています。
| 飛行距離 | 遅延・欠航時の補償額 |
| 1,500km以内 | 250ユーロ(約4万円) |
| 1,500km~3,500km以内 | 400ユーロ(約6万4,000円) |
| 3,500km超(EU域外へ) | 600ユーロ(約9万6,000円) |
上記に加えて、遅延時間に応じて食事や飲み物、宿泊施設(必要な場合)の提供も義務付けられています。

このEU261法は乗客にとって非常に強力な保護規定ですが、コードシェア便においては、「運航会社がEU圏の航空会社であるか」、そして「フライトがEU圏から出発するか」という2点を正確に把握しておく必要があります。



したがってEU圏を絡むフライトを予約する際は、販売会社だけでなく運航会社がどの国の航空会社かを必ず確認しておくことが、トラブル発生時のスムーズな対応につながります。
コードシェア便でのトラブルを避ける最強の対策

コードシェア便は、複雑な仕組みさえ理解しておけば、最大限のメリットを享受できる最強のツールに変わります。
最後に、トラブルを未然に防ぎ、快適な旅を確実にするための具体的な対策をまとめておきます。
1. 予約前の徹底確認と「運航会社」の把握
これが、コードシェア便を利用する上での最重要事項です。チケットを購入する際は便名や価格だけでなく、以下の情報を必ず確認しましょう。
| 確認すべき情報 | なぜ重要か |
| 便名(コード) | チケットを購入した販売会社(例:JAL便名) |
| 運航会社名 | 実際に搭乗する航空会社(例:アメリカン航空) |
| 機材情報 | 運航会社の機材(機内サービスや座席の質に直結) |
| 乗り継ぎ時間 | 乗り継ぎ地での移動時間と、荷物の取り扱い(スルーチェックインできるか) |
運航会社名は予約確認画面やEチケット、航空会社のウェブサイトのフライト情報欄に必ず明記されています。この情報を知っているかどうかで、旅の安心感が大きく変わります。
2. 運航会社の公式サイトで情報や規程を再確認
「座席指定」「機内食の特別オーダー」「超過手荷物料金の確認」など、フライトに関する具体的な手続きや問い合わせは原則として運航会社の管轄となります。
チケット購入後、すぐに運航会社の公式サイトへアクセスし、運航会社の予約番号を使ってログインして、以下の手続きを済ませておきましょう。
| 運航会社側で行うべき手続き |
| 座席指定:販売会社では指定できない座席も、運航会社側では開放されている場合がある。 |
| 特別機内食:アレルギー対応食、ベジタリアン食などのリクエストは運航会社へ。 |
| 手荷物規定:無料手荷物許容量、サイズ制限を運航会社の最新情報で確認。 |
特にマイルの積算にこだわる方は運航会社のサイトでマイル積算の予約クラスを再確認し、自身のマイレージプログラムに正しく反映されるかを確認しましょう。
3. チェックインは運航会社のカウンターへ直行
空港に到着したら、看板や案内表示で「運航会社」のロゴを探しましょう。
便名がJAL便(JLxxxx)であっても、運航会社がブリティッシュ・エアウェイズであれば、迷わずブリティッシュ・エアウェイズのチェックインカウンターに向かうのが鉄則です。
もし、オンラインチェックインを済ませている場合でも、荷物を預けるために運航会社のカウンターを訪れる必要があります。
間違って販売会社のカウンターに行ってしまうと、時間のロスにつながるため、この「運航会社ファースト」を徹底しましょう。
4. Eチケットの印刷と重要情報のハイライト
万が一、遅延や欠航といったトラブルが発生した場合、空港のスタッフやコールセンターの担当者は、まず乗客のEチケットを確認します。
Eチケットには、便名、予約番号、氏名などの基本情報のほかに「運航会社(Operated by:~)」が必ず記載されています。
トラブル発生時にスムーズに対応してもらうためにも、Eチケットを印刷し、以下の情報を太字(マーカー)で強調しておきましょう。
| Eチケット内でハイライトすべき情報 |
| 運航会社名(例:Operated by AMERICAN AIRLINES) |
| フライトの運航番号(例:AA xxx) |
| 予約クラス(例:Booking Class V) |
| 乗り継ぎ地 |
この準備をしておくことで混乱した状況下でも、スタッフに正確な情報を素早く伝えることができ、迅速な振り替えや手続きにつなげられます。
まとめ

コードシェア便は航空会社同士の戦略的な協力関係であり、乗客にとっては、より便利で多様な選択肢を与えてくれる画期的なサービスです。
しかし、その一方で「販売会社と運航会社が違う」という仕組みの複雑さが、サービス内容のギャップ、マイル積算の混乱、そして最も重大な遅延・欠航時のトラブルという「落とし穴」を生み出します。
この落とし穴を避けるためのカギはただ一つ、「運航会社(Operating Carrier)がどこか」を常に意識することです。
予約前から旅の終わりまで、常に運航会社のサービスや規定に準ずるという意識を持っておけば、コードシェア便は空の旅の強力な味方となると言えます。

特にヨーロッパ路線の場合は、運航会社によってはEU261法という乗客保護の強力な盾があることを知っておくことで、万が一のトラブル時も落ち着いて対応できるようになります。

今日のこの解説で、コードシェア便に対する理解が深まり、次の空の旅がより快適で安心できるものになることを願っています!
Q&A(コードシェア便に関する10の疑問と回答)
Q1:コードシェア便とアライアンス(JALのワンワールド、ANAのスターアライアンスなど)は何が違うのですか?
A1:アライアンスは、複数の航空会社が広範囲に提携し、世界的なネットワーク、マイル、ラウンジなどを共有する「大きな協力体制」です。一方、コードシェア便は、そのアライアンスの枠組み内で、個々のフライトに対して便名を共有する「具体的な販売手法」です。ほとんどのコードシェアはアライアンス内で行われますが、個別にアライアンス外の航空会社と提携している場合もあります。
Q2:コードシェア便でも、機内食や座席指定は販売会社からできますか?
A2:座席指定や特別機内食のリクエストは、原則として「運航会社(Operating Carrier)」のシステムで行う必要があります。チケット購入後、販売会社から知らされた運航会社の予約番号(6桁の英数字など)を使って、運航会社のウェブサイトにログインし、手続きをしましょう。
Q3:運航会社がLCC(格安航空会社)だった場合、コードシェア便は適用されますか?
A3:基本的に、JALやANAなどのフルサービスキャリア(FSC)はLCCとコードシェア提携を結ぶことはほとんどありません。LCCは独自の低コスト戦略を採っているため、コードシェアのメリットが少ないためです。あなたが購入したチケットに日本の大手航空会社の便名が付いている限り、運航会社はフルサービスキャリアであることが多いです。
Q4:コードシェア便のチェックインは、どの会社のカウンターに行けばいいですか?
A4:「運航会社(Operating Carrier)」のカウンターへ行きましょう。あなたが予約した販売会社の便名(コード)ではなく、実際に飛行機を飛ばす会社のロゴを探してチェックインすれば間違いありません。
Q5:コードシェア便で欠航になった場合、補償の請求先は販売会社と運航会社、どちらですか?
A5:原則として「運航会社(Operating Carrier)」が、欠航時の振り替え便の手配や補償の責任を負います。ただし、チケットを購入した販売会社もサポート窓口となるため、両方に連絡して、より迅速に対応してくれる方を頼るのが賢明です。
Q6:EU261法が適用されるフライトで3時間以上の遅延が発生した場合、補償の申請はどのように行いますか?
A6:補償の申請は、実際にフライトを運航した航空会社に対して行います。運航会社の公式サイトにある「お問い合わせ」や「遅延・欠航補償申請」の専用フォームから、フライト情報と遅延時間、補償を要求する旨を伝えましょう。
Q7:コードシェア便を利用した場合、マイルの積算率はどうなることが多いですか?
A7:マイル積算率が低下することが多いです。販売会社から購入したチケットの「予約クラス(ブッキングクラス)」が、マイルを積算したい提携先のマイレージプログラムにおいて、積算対象外や低い積算率(50%や30%など)に設定されているケースが頻繁に見られます。購入前に必ずマイル積算表を確認しましょう。
Q8:コードシェア便で乗り継ぎをする場合、預けた荷物は最終目的地まで自動で運ばれますか?
A8:ほとんどの場合、コードシェア便を含む旅程では、預けた荷物は最終目的地まで自動で運ばれます(スルーチェックイン)。ただし、一部の国や地域(特にアメリカ国内線への乗り継ぎ時など)では、税関手続きのために、一旦荷物を受け取って再預け入れが必要になる場合があります。
Q9:販売会社と運航会社で、手荷物規定が異なるときは、どちらの規定が適用されますか?
A9:通常、旅程の中で最も長い区間を運航する航空会社(運航会社であるとは限りません)の手荷物規定が適用されます。しかし、コードシェア便では判断が複雑になるため、必ず運航会社のウェブサイトで自分の予約クラスの手荷物許容量を確認し、その規定に従うのが最も安全です。
Q10:コードシェア便のチケットが、運航会社の直接販売価格よりも安くなるのはなぜですか?
A10:販売会社が、自社のブランド名を使って座席の販売を促進するため、戦略的に運賃を低く設定している場合があるからです。これにより、同じフライトでも複数の価格帯が生まれ、乗客はより柔軟な運賃から選択できるようになります。複数のサイトで運賃を比較することで、お得なチケットを見つけられる可能性があります。
