海外旅行や海外出張、留学など、海外で過ごす機会が増える中、「もし海外で病気やケガをしたらどうしよう・・・」と不安に思う方も多いのではないでしょうか?
「日本の健康保険や社会保険は、海外でも使えるのか?」、これは海外に渡航する多くの方々が抱く疑問です。
国際結婚の我が家は現時点で日本在住であるため、フランスに帰国しても現地の健康保険に加入することはできません。(実は日本との条約である一定の条件を満たすと加入することができますが、少しややこしくなります。)
そのため短期での帰国となると現地で風邪をひいて高熱がでたり、予期せぬ大ケガに見舞われたりすることを考えると不安になります。
そこで私自身も「海外で国民健康保険・社会保険って使えるのかな?調べてみよう!」となったわけです。
徹底して調べた結果、結論からお伝えすると、海外でも国民健康保険や社会保険は使えます。
ただし、日本国内と同じように海外の医療機関で保険証を提示するだけでOKというわけではなく、手続きが必要な「海外療養費制度」という仕組みを利用することになります。
今回は、海外療養費制度の利用方法・申請方法から、知っておくべき注意点、さらに民間の海外旅行保険との賢い組み合わせ方まで、詳しく解説していきます。
この記事を読んで海外でのもしもに備え、安心して旅や生活を楽しめるように準備してください。
海外でも国民健康保険・社会保険が使える制度

日本の健康保険や社会保険に加入している方が、海外渡航中に急な病気やケガで現地の医療機関にかかった場合、帰国後に申請することで、支払った医療費の一部が払い戻される制度、それが「海外療養費制度」です。
これは旅行中の予期せぬ体調不良や、海外赴任中のケガなどやむを得ず現地の医療機関で診療を受けた場合に適用されます。
この制度を知らないと海外で支払った高額な医療費を全額自己負担することになりかねませんが、逆にうまく活用できれば経済的な負担を大きく減らすことができます。
実際、海外旅行中に交通事故に遭い、大きな手術をして入院していたケースで数百万円もの医療費を請求された話もあるため、この健康保険の制度について良く理解してから海外旅行などをするようにしましょう。
海外で国民健康保険・社会保険が使えないケース
海外でも健康保険が使えると聞いて安心した方もいるかもしれませんが、どんなケースでも利用できるわけではありません。以下の場合は、海外療養費制度の対象外となります。
①治療目的での渡航
最初から治療を受けることを目的として海外へ渡航した場合は、この制度は利用できません。
美容整形やインプラント治療など、日本で保険適用外の治療を受ける場合も同様です。あくまで“予期せぬ”病気やケガが対象となります。
②日本で保険適用外の治療やサービス
前述の通り美容整形やインプラント、予防接種、健康診断など、日本国内で保険適用と認められていない医療行為は、海外で受けても支給対象になりません。
また、差額ベッド代や医師に処方されていないマッサージなども同様に給付の対象外です。
③仕事中のケガや病気
海外赴任などにおいて仕事中や通勤途中のケガや病気は労災保険の対象となるため、健康保険の海外療養費制度は利用できません。
そういったケースでは勤務先や雇用主に相談し、適切な手続きを取ってもらう必要があります。
なぜ医療費が全額自己負担?海外の医療費事情と日本の給付額

海外で病気やケガをした場合、まずは現地の医療機関で治療費を全額自己負担で支払う必要があります。
日本のように“保険証を提示して自己負担分だけを支払う”というわけにはいきません。そして、この自己負担額は国や地域によって、驚くほど高額になることがあるので注意が必要です。
海外の医療費、給付額は日本の基準で計算
海外で支払った医療費が日本の健康保険からどれくらい給付(還付)されるのか、気になりますよね。
実は、給付される金額は「日本国内で同じ治療を受けた場合にかかる費用」を基準に計算されます。
例えばアメリカで風邪をひいて病院に行き、1,000ドルの治療費を支払ったとします。
しかしそれが日本で同じ治療を受ける場合、その費用が3万円だったとすると給付額はこの3万円を基準に計算されます。
自己負担分(通常3割)を差し引いた額、つまり3万円の7割にあたる「2万円程度しか戻ってこない」ということになるのです。
この「内外価格差(日本国内と海外との医療費の価格差)」によって、たとえ海外で高額な医療費を支払ったとしても、日本で受けられる給付額が少ないということになります。
特に医療費が非常に高額なアメリカやヨーロッパでは、給付額が支払った費用の2割前後にとどまることも珍しくありません。
一方で、医療費が比較的安価なアジア地域(例:中国、東南アジア)では、給付される額・割合が高くなる傾向にあります。
実際の給付例:アメリカとアジアを比較
ここで、具体的な事例を挙げてみましょう。日本で加入している健康保険の自己負担割合が3割だと仮定します。
| 国/地域 | 海外で支払った医療費 | 日本での換算医療費 | 給付額(日本換算額の7割) | 実質自己負担額 |
|---|---|---|---|---|
| アメリカ | 200万円 | 100万円 | 70万円(100万円の7割) | 130万円(200万円 – 70万円) |
| アジア(中国など) | 50万円 | 100万円 | 70万円(100万円の7割) | -20万円(50万円 – 70万円) |
この例から分かるようにアメリカで高額な治療を受けた場合、支払った200万円のうち70万円しか給付されず、実質130万円を自己負担することになります。
一方、アジア地域で比較的安価な治療を受けた場合、支払った50万円よりも給付額の70万円の方が高くなるケースもあり、実質的な自己負担額がゼロになることもあります。
この比較は海外療養費制度が「支払った医療費の全額を補償するものではない」ことを示しています。
なので高額な医療費がかかる国へ渡航する際は、医療保険の有無については特に注意が必要です。
海外での出産・妊娠でももらえる「出産育児一時金」

海外で駐在中に妊娠・出産を経験する方も少なくありません。
妊娠や出産は病気ではないため「海外療養費制度」の対象にはなりませんが、日本の健康保険、社会保険に加入していれば日本にいるときのように「出産育児一時金」を申請することができます。
この「出産育児一時金」の支給額は法制度などの改正で変動するため、そのときどきで確認する必要がありますが、海外での出産も対象となり満額支給されます。
出産した日の翌日から2年以内に申請すれば受け取ることが可能です。
民間の医療保険も検討すべき理由
「出産育児一時金」は非常にありがたい制度ですが、アメリカなど医療費が非常に高額な国では、この一時金だけでは出産費用をすべてカバーできないケースがあります。
民間企業などが提供する海外旅行保険では、妊娠・出産に関する費用が補償対象外となるのが一般的ですが、一部の保険では条件付きで補償されることもあります。
高額になりがちな海外での出産費用に備えるためにも、出産育児一時金に加えて、現地の医療保険や民間のヘルスケアプログラムへの加入ができないか検索・検討することをおすすめします。

海外でも「高額療養費制度」も海外で適用される?
日本国内では、1か月の医療費の自己負担額が一定額を超えた場合に、その超えた分が払い戻される「高額療養費制度」があります。
この制度は海外で受けた診療にも適用されます。ただし海外療養費制度と同様に、支給される金額は「日本国内で同じ治療を受けた場合」を基準に計算されます。つまり、海外で高額な医療費を支払ったとしても、高額療養費として支給される金額は、日本で治療を受けた場合と同額になる点に注意が必要です。
「海外療養費制度」の申請方法と必要書類
海外で支払った医療費の払い戻しを受けるためには、日本へ帰国後に申請手続きが必要です。
この申請手続きが非常に煩雑で多くの書類をそろえる必要があるため、申請を躊躇してしまう方も多いようですが、少しでも給付が受けられるように把握しておくと経済的にも助かります。
「海外療養費制度」の申請に必要な書類
申請には主に以下の書類が必要となります。
| 書類名 | 概要 |
|---|---|
| 海外療養費支給申請書 | 健康保険組合や市区町村のホームページからダウンロードするか、窓口で入手します。 |
| 診療内容明細書 | 現地の医師が作成する、診療内容を記載した書類。 |
| 領収明細書 | 現地の医療機関が発行する、医療費の領収書。 |
| パスポートの写し | 渡航期間の証明のため、顔写真ページと出入国スタンプのページの写しが必要です。 |
| 各書類の日本語訳 | 診療内容明細書と領収明細書は、日本語に翻訳し、翻訳者の住所・氏名・連絡先を記載します。 |
| 同意書 | 申請した内容について、現地の医療機関に確認を行うための同意書。 |
| 振込口座が分かるもの | 世帯主名義の通帳など、給付金の振込先が分かる書類。 |
| 健康保険証の資格情報 | 健康保険証など、資格情報を証明する書類。 |
これらの必要書類は、申請先の自治体や健康保険組合によって若干異なる場合があるため、事前に確認が必要です。
不正請求防止のための厳格な審査
「海外療養費制度」は、不正な請求を防止するために非常に厳格な審査が行われます。
提出した書類の内容が現地の病院に確認されることもあり、審査には数か月かかることも珍しくありません。
多くの自治体のホームページでは「不正が発覚した場合には警察と連携して厳正な対応を行う」と明記されているほどです。
そのためすぐに支給されると思わず、「申請して忘れたころに入金されるんだな」と余裕をもって気長に待つと良いでしょう。
給付の申請場所と申請期限
国民健康保険の場合は市区町村の対応窓口で、社会保険の場合は健康保険組合に申請することになります。
| 保険の種類 | 申請先・方法 |
|---|---|
| 国民健康保険 | 市区町村の役所の窓口 |
| 社会保険 | 勤務先を通して健康保険組合に申請、または郵送 |
そして、最も重要なのが申請期限です。医療費を支払った日の翌日から数えて2年以内に申請を完了させる必要があります。この期限を過ぎてしまうと、どれだけ海外で高額な医療費を支払っていても、そして給付を受け取る条件を満たしていても、給付を受けることができなくなります。
書類の準備だけでなく、それを翻訳する作業などもあるため病気やケガが治ったあとから、できるだけ早い段階で準備を進めることが大切です。
民間の海外旅行保険のメリット

ここまで見てきたように「海外療養費制度」には「給付額が日本基準で自己負担額が大きくなる」、「全額自己負担で一旦支払う必要がある」、「手続きが煩雑」などといったデメリットがあります。
そこで、ぜひ活用を検討しておいたほうが良いのが、民間の海外旅行保険です。
医療費のカバー範囲が広いことや各種サービスの付帯、給付まで比較的早いことなど、多くのメリットがあります。
海外旅行保険の強み
| サービス内容 | 説明 |
|---|---|
| 高額な医療費でも安心の補償 | 海外での医療費水準に合わせて設定されているため、高額な医療費にもしっかり備えられます。 |
| キャッシュレスサービス | 提携している医療機関であれば、保険会社が直接病院に医療費を支払ってくれるため、自己負担なしで治療を受けられます。 |
| 日本語通訳サービス | 現地の病院で言葉の壁に直面した際、日本語で通訳サポートが受けられるサービスが付帯しているプランもあります。 |
| 救急搬送費用も補償 | 病気やケガで日本へ緊急帰国が必要になった場合、高額になりがちな搬送費用も補償されます。 |
個人的には「海外療養費制度」はあくまで「二次的な補償」と捉え、メインの備えとして民間の海外旅行保険に加入することをおすすめしています。
特に、医療費が高額な国へ渡航したり長期滞在したりする場合は、その必要性がさらに高まると思います。

クレジットカード付帯の海外旅行保険も確認を
日本のクレジットカードには海外旅行保険が無料で付帯しているものが多々あります。
病気やケガの治療にかかった費用だけでなく、スーツケースや貴重品などの紛失・盗難・破損なども、条件を満たせば補償されることがあるため、海外へ渡航する前にカード会社のホームページなどで付帯しているか確認しておくべきです。

因みに「旅費(航空券代金や列車料金など)をクレジットカードで事前に支払っていること」が補償を受ける条件としている会社がほとんどなので、各種条件や注意点などの見落としがないようしましょう。
以下、海外旅行保険が付帯しているカードで、国内でも国内旅行傷害保険やポイント還元サービスなどもあるカードを厳選してみました。年会費無料なので発行しておいても損はありません。↓
まとめ
今回は海外でも日本の健康保険や社会保険が使える「海外療養費制度」について詳しく解説しました。まとめていくと、
海外でも国民健康保険・社会保険は使えますが、原則として全額自己負担で支払い、帰国後に申請することで一部が払い戻されます。
給付額は「日本国内で同じ治療を受けた場合」を基準に計算されるため、支払った医療費よりも大幅に少なくなることがあります。
・申請には多くの書類が必要で、日本語訳も準備しなければなりません。
・申請期限は医療費を支払った日の翌日から2年です。
・海外療養費制度だけでは不安なため、民間の海外旅行保険を併用することで、より安心して海外生活を送ることができます。
これから海外に行く予定のある方は、ぜひこの記事を参考に、万が一に備えておいてください。事前の準備が、安心できる海外生活の第一歩です。

Q&A
Q1:海外で病気になったら、まずはどうすればいいですか?
A1:まずは、現地の医療機関を受診し、治療を受けてください。この際、診療内容明細書や領収明細書など、後日申請に必要な書類を必ず受け取っておくことが重要です。
Q2:海外療養費制度の給付額はどのように計算されるのですか?
A2:日本国内の医療機関で同じ病気やケガを治療した場合の費用を基準に計算されます。実際に支払った額が日本の基準額より低い場合は、支払った額が基準になります。
Q3:申請に必要な書類の日本語訳は、誰がやってもいいですか?
A3:はい、翻訳に自信があればご本人でも構いません。ただし、翻訳者の住所、氏名、連絡先を必ず記載する必要があります。
Q4:申請から給付金が振り込まれるまで、どれくらいかかりますか?
A4:申請内容の審査に時間がかかるため、通常、数ヶ月かかるケースが多いです。不正請求防止のため、審査が厳格に行われます。
Q5:海外旅行保険と海外療養費制度は、どちらを先に使えばいいですか?
A5:多くの海外旅行保険では、キャッシュレスサービスを利用できるため、まずは海外旅行保険を活用することをおすすめします。海外療養費制度は、旅行保険で補償されない部分などを補完する「二次的な保険」として考えると良いでしょう。
Q6:海外で妊娠した場合、出産費用も健康保険で補償されますか?
A6:妊娠や出産は病気ではないため、海外療養費制度の対象外です。ただし、日本の健康保険に加入していれば、「出産育児一時金」を申請することができます。
Q7:日本でインプラント治療は保険適用外ですが、海外でインプラント治療を受けても支給されますか?
A7:いいえ、支給されません。海外療養費制度の対象となるのは、日本国内で保険診療として認められている医療行為に限られます。
Q8:海外で支払った医療費の証明書は、原本が必要ですか?
A8:はい、原則として領収書原本が必要です。提出前に必ずコピーを取っておくことをおすすめします。
Q9:海外にいる間に、申請期限が過ぎてしまいそうです。どうすればいいですか?
A9:海外滞在中に申請期限が迫っている場合は、日本にいるご家族などに手続きを委任できる場合があります。事前に加入している健康保険組合や市区町村に相談してみましょう。
Q10:海外で病気になった場合、現地の医療機関はどうやって探せばいいですか?
A10:民間の海外旅行保険に加入している場合は、保険会社のサポートセンターに連絡すると、提携している医療機関を紹介してもらえます。大使館や領事館に相談する方法もあります。

今回はここまでとなります。海外でもケガを負ったり病気になってしまったりすることは多いにあるので、医療費が高額になってしまい、せっかく楽しかった旅行などが台無しにならないように、健康保険や社会保険の海外療養費制度についてしっかりと把握して、安心・安全に海外へ行きましょう。
それでは、A bientôt!!!
