「非居住者だから日本に税金なんて納めることないでしょ」と安心しきっている人、かなり注意が必要です。
つい最近では1年未満の契約で滞在していた外国人プロサッカー選手が、日本と海外当局に二重課税されていると訴える事案が起きています。
これ以外にも過去の最高裁判所や東京裁判所の判例では、「居住者」や「非居住者」のみで納税義務の有無が示されたわけではなく、住居の場所(寝泊まりを主にしている場所)や年間の滞在日数、仕事の内容などを総合的に見て判断されていることが分かります。
税務大学校研究部主任教授 木村 直人氏による論説「居住者・非居住者の課税上の問題点」においても、居住者と非居住者の区分について詳しく書かれているので、内容は長くなりますが気になる人は一度目を通してみると良いです。
「海外転出届をだしたから」、「高収入じゃないから」などと思っている人は、考えを改めて必ず詳細を把握するべきです。
私自身、海外在住のときに「非居住者だけど日本に税金を払うべきなのかどうか分からなくて不安」と心配されている人、「これまで日本の国税庁や税務署から連絡なんてなかったし大丈夫」と言っている人も多々見てきました。
その中の数人は、そのあと大変なことになっていました。
私が当ブログで注意喚起をしているのもこういった事例を幾つか見聞きしてきたからです。
そこで今回はこれから海外へ長期出国する人、既に海外に長期滞在中の人、海外移住している人にむけて、簡単に非居住者でも日本に税金を納めなければいけない4つのケースについて紹介していきます。
複雑な相続税に関してや日本に納税しない場合の注意点も紹介しているので、あまりこういった話に疎く、少しでも関係がありそうで不安な人は最後まで読んでいただくと安心感が得られような内容にしています。
個別の複雑な状況や既に不安で仕方がないという人は、是非「税理士ドットコム」の税理士さんに相談してください。
私も移住する際にかなりお世話になり、全て疑問や問題点がすっきりと解決することができました。税理士さんに相談することが初めてという場合でも、自分の状況などに合った人を見つけられますし、優しく丁寧に回答してもらうことができます。↓↓↓
非居住者でも日本に税金を納めなければならないケース
まずそのケースの1つとして挙げられるのが、非居住者でも日本で源泉所得がある場合や、不動産所得がある場合などです。
詳しくは過去のブログ記事で詳細に解説しているので、気になる人は是非ご確認ください。↓
また海外在住者であっても日本に「恒久的施設(英語ではPermanent Establishment)」を持っていて、そこで事業などを行っている場合も日本で納税する義務が生じます。
「恒久的施設」と聞くと“はてなマーク”が頭の上にでてくる人がいそうですが、要は「その国において事業をする場所(施設)」と認識しておけば良いです。
海外企業などを例にすると分かりやすいですが、海外企業でも日本に事業所を構えて展開していれば、日本に課税する必要があるということです。
「恒久的施設なければ課税なし」という考え方が国際的なルール(認識)になっています。
その一方でネットを介したビジネスやサービス提供などでは、各国に拠点を置かずに事業展開ができてしまうことが問題になっていて、そういった企業に対しても課税ができるように「デジタル課税」が条約として2025年までに発行される予定です。
少し話が逸れてしまいましたが、次は「非居住者でも居住者になってしまう」恐ろしさについてです。
非居住者だと思っていても居住者と認定、日本で納税を求める判決も
日本の区役所などに海外転出届を提出すると非居住者になり、住民票もなくなることはこのブログを読んでいる人であれば知っていることだと思いますが、実は「非居住者も居住者として認定される」過去の裁判の判決事例があるのです。
これだという明確な判断基準はありませんが前述した通り、住居の場所(寝泊まりを主にしている場所)や年間の滞在日数、仕事の内容など総合的にその人の居住地がどこなのかが判断されることとなります。
そのため仮に書類上では非居住者とされていて海外に家があっても、日本にも家があり定期的に帰国・帰宅し、生活をしているような実態が確認されたり、仕事をして寝泊まりをしていたりなど、日本に居住していると判断されても仕方がない場合は「居住者」としてみなされ、所得税などが課税されることがあります。
もちろん不服があれば裁判で争うことになるのですが、過去の最高裁の判例もあるので同じような事例で勝つことは難しいので、気になる人は一度「非居住者 居住者 税金 判例」などといたキーワードで検索なして調べておくと良いです。
非居住者でも日本の財産を相続する場合は全て税金がかかる事実
そして海外に長年住んでいる人が気になることの1つ、「相続税」の話です。
「日本に住む両親が亡くなったとき、非居住者であるその子どもが財産を相続するとなると相続税はかかるのか問題」は、なかなか複雑でパッと説明することはできないので、後日改めて当ブログで詳細にわたりまとめていきますが、簡単にポイントだけ挙げておくと以下のようになります。↓
・外国籍であっても日本国内の財産は課税対象
・相続開始時点での海外における居住期間が10年以上の場合は日本国内の財産のみ課税
・相続開始時点での海外における居住期間が10年未満の場合は、国内外全ての財産に課税
そのため「そもそも相続することができるのか?」という疑問は解消されますが、相続税という形で日本には納税をしなければいけません。
仮にシンガポールやオーストラリア、スウェーデンなどといった相続税という税法がない国に滞在していたとしても、相続するのであれば日本への相続税の支払いは避けられません。
その一方でどうしても相続税を払いたくないという人は、相続の権利を放棄するという手も1つあるので覚えておくと良いでしょう。
海外長期滞在中でも住民票を入れたままだと税金を支払う義務あり
海外に家があっても日本に住民票がある状態だと、各種税金の支払い義務が生じてきます。
例えばノマドをしている人などは、海外各国を転々として生活をしつつも、日本の住民票は抜かずにいることで書類・データ上は日本にいる「居住者」となるため、海外にいるのに日本にいる人として扱われます。
もちろん市民税・県民税、所得税、年金、国民健康保険料の支払いも義務となります。
特に注意が必要なのが所得に関してです。
日本は居住者に対して「全世界所得課税方式」をとっているため、海外で得た収入にも全て課税されます。
そのため定期的に帰国してしっかりと確定申告などをするか、出国する際に転出届を提出して「非居住者」になっておくなど、自身がどういう立場であるのか把握して行動することが大切です。
非居住者で日本に税金を支払わなくて良いなら必ず海外現地に納税を
「海外在住者(非居住者)で日本で得ている収入(報酬)がある人で、日本では課税されないケースなのに海外現地でも納税していない」といった人がいるということ、これも遅かれ早かれ必ず大きな問題になります。
近年、パソコンとネットさえあれば、どこにいても働ける仕事がある中で、それを申告せずにブラックの状態のまま働いている人がいるということです。
「これまでは指摘されたことないし、バレることもないだろう」と思っていても、日本と海外当局はそれぞれ、その実態を調べたり見つけたりすることを容易になっています。
最近では活発に各国同士で銀行口座情報の交換を行っているので注意したほうが良いです。
気になる人は以下のリンクカードから確認してください。↓
日本だけでなく海外当局も目を光らせていて、日本の銀行口座なども調査対象となるので税理士さんなどに相談して納税や銀行口座の利用など、何を指摘されても問題のないようにすることをおすすめします。
今回挙げたこと以外にも非居住者であっても日本に税金を支払うケースは多々あるため、海外移住したり海外長期滞在をしたりする人は必ずどちらの国に納税するべきなのか、明確にしておくようにしましょう。